人生に悩むあなたへ。「いちご同盟」のあらすじと感想

中学の国語の教科書に載ったこともあり、「いちご同盟」というタイトルだけなら知っている方もいるのではないでしょうか。

「いちご同盟」の主な登場人物は中学生ですが、内容はかなりヘビーでもあります。

なんせテーマの一つに「自殺」があるんですから。

子供の自殺が珍しいものでは無い現代で「自殺」を取り扱った本書が、中学校の教材になったのも読了した今なら分かります。

それほど深く、新たな発見に出会える、読み応えのある一冊です。

この本は、今の自分の人生に思うところがある、と感じている大人におすすめします。

それでは、さっそくあらすじから見ていきましょう。

「いちご同盟」のあらすじ

「いちご同盟」は15歳の中学生たちが「人の生き死に」と「現実と理想」に直面したとき、何を思い、どう生きていくのかを描いた物語です。

主人公の北沢良一きたざわりょういちはピアニストを目指してはいるものの、自分にそんな実力があるのか、ピアニストになれたとしても自分はやっていけるのだろうか、と高校受験を控えながら過ごしていました。

そして、小学五年生で自殺した少年のことが頭から離れないままでもいた。

ある日、良一は、野球部のスターである羽根木徹也はねぎてつやに「自分が野球をしている姿をビデオに撮ってくれ」と頼まれます。

渋々と了解した良一は試合の後、徹也と一緒にビデオを持って、入院中の少女のもとに行きます。

その少女とは、徹也の幼馴染であり、重症の腫瘍で入院中の上原直美うえはらなおみでした。

それからというもの、良一は徹也と共に元気づけようと直美のもとにお見舞いに行くようになりました。

直美は、良一の弾いた曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」を気に入り、良一も直美のことを良く思っていたため、お互いはだんだんと惹かれていきます。

そんなとき突然、直美が良一に言った一言「あたしと、心中しない?」

この直美の言葉をきっかけに物語は動き出し、良一は「恋愛と友情」、そして「生と死」に対して向き合わなければならなくなります。

「いちご同盟」のを読んでの感想

ここからは、実際に僕が「いちご同盟」を読んでの感想です。

小学五年の11歳で自殺した少年

良一は物語の中で、事あるごとにこの自殺した少年の言葉を思い出すことになります。

その少年が自殺した原因は、当時の担任に自分の考え方を叱られたことから。

生前、努力の尊さを説く担任に対して、「正義や理想とは、大人の約束事であり、本当は大人たちもそんなものは信じていない」といった作文を提出していたそう。

まだ小学生でありながら、世の中を冷めた目で見ていたんですね。

そんな少年に良一は少し共感しており、自殺現場に足を運んで思いをはせるほどでした。

自殺現場の少年が最後に壁に殴り書きした遺書のような言葉が、物語を通して良一の頭の中を巡ります。

むりをして生きていても
どうせみんな
死んでしまうんだ
ばかやろう

この「ばかやろう」という言葉は、少年を責めた担任に向けてのものか、それとも世の中全体に対してなのか。

「どうせ死んでしまうのに、なぜ頑張って生きているのだろう」あなたも一度は考えたことありませんか?

良一も自身にもあてはめ悩みます。頑張って有名なピアニストになったとしても、どうせ死んでしまうのならそれでおしまいなのではないかと。

そんな中、重病によって死の淵の立たされている直美との出会いで、良一の死に対する考え方が少しずつ変わり始めることになります。

直美に自殺について考えていることを打ち明ける

直美のお見舞いに行ったある日、「悩み事、あるでしょ」と良一が悩んでいることを見抜かれます。

良一は、病人の直美の前であるにも関わらず、小学五年生が自殺した話を切り出しました。

すると直美は自殺を頭に入れた上で良一はこれからどう生きていくのか、と問われます。

今目指しているのは音楽高校だが、他にも専門学校や就職でもいい。その中のいろんなリストの中に自殺が入っても悪くはない

これが良一の今の考えでした。

その時に直美が話した内容が、実際に読んでいて非常に考えさせられました。

「あたしが自殺したって病気のせいだと思われるでしょ。自殺って元気な人がやらないと誰も驚かないものね

「五年生の時は、病気じゃなかった。あたしにも自殺する権利があった」

重病になり、死の淵に立たされた人間には、自殺すら病気のせいで自殺だと思われない。

直美からすると、自殺ができる健康な人間も羨ましい存在だったのです。

「可能性がある人がうらやましい。自殺のことを考えるなんて、贅沢だわ」

僕はこの場面を読んで、健康に生きていられることがどれほど幸せか、改めて痛感しました。

病気を患い、死が身近なものになると、人生の選択肢や可能性はほぼ無くなります。

自殺するという可能性すら奪われるのです。

逆に言えば、自殺してしまいたいとまで思い悩んでいる人でも、人生の可能性は無限にあるということ。

どうせ死んでしまう人生で、直美は生きようとしている。闘おうとしている。

そんな直美に胸を張れるような人生を、あなたは生きていますか?

「いちご同盟」のまとめ

中学生たちの繊細で直実な青春小説「いちご同盟」。

主な登場人物は中学生なのですが、本の内容は大人が読んでも新たな気づきがあるほど、深い内容となっています。

自分のこれからの人生に思うところがある、と感じる人は読んでみてください。

良一と直美の掛け合いを通して自分の人生を見つめなおしてみるのも良いかもしれません。

僕にとっては、生きる活力を登場人物たちにもらえた、人生に思い悩んだらまた読みたいと思えた一冊です。

この記事を機に「いちご同盟」を読み終えたとき、あなたにとってどんな本になるのでしょうか?

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