「教室に並んだ背表紙」のあらすじと感想|あなたの悩みは図書室へ!【相沢沙呼】

「そのひとさし指でこの背に触れて、窮屈な書架から抜き出してほしい」

ー 教室に並んだ背表紙 ー

今回は、相沢沙呼の中学校の図書室を舞台にした連作集「教室に並んだ背表紙」を書評していきます。

学校生活の息苦しさに悩む女子中学生たちが、司書のしおり先生との出会いで変化していく心模様を描いた青春小説。

「medium」でミステリーの賞を総なめにした相沢沙呼ならではの、ちょこっとした仕掛けもありますよ♪

それではまず、「教室に並んだ背表紙」はどんな人におすすめなのか、解説していきます。

どんな人におすすめ?

りた
小説は主人公に共感できてこそ面白い!byりた

「教室に並んだ背表紙」は6つの短編に分かれており、6人の女子中学生の主人公がいます。

主人公たちの設定、悩みをまとめてみました!あなたは共感できそうですか?

  • クラスでいじめられている子をどうにかしてあげたい
  • 学校生活が息苦しい、居心地が悪い
  • 学校や家に自分の居場所が無い
  • 二次元に存在する彼をなぜ好きになってしまったのか
  • 将来のことを思い悩み、人生が詰んでいると感じている

学校生活で主人公たちと同じように悩んでいる女子中学生には、間違いなくこの本は刺さります。

また、中学生の頃に主人公たちと同じような悩みを抱えながら過ごしていた大人の女性の方も当時の自分を懐かしみながら読むのをおすすめします!

物語を通して主人公たちに寄り添ってくれる「しおり先生」の存在は、同じ悩みを持ったあなたへの人生の道しるべになってくれるでしょう。

私も中学生の頃は、人間関係の悩みから学校に行けなくなったこともあったので、「しおり先生がいてくれたらもっと青春できていたかなぁ」と読みながら思っていました(笑)

「教室に並んだ背表紙」の簡単なあらすじ

ある中学校の図書室を舞台にした6編で構成された連作集。


1、その背に指を伸ばして
同じ本が好きな子に、勇気が出ず声をかけられないでいる佐竹さん。

2、しおりを滲ませて、めくる先
クラスに馴染めず、未来に生きることを諦めている真汐。

3、やさしいわたしの綴りかた
クラスの間違ったルールと、家庭環境に悩みを抱いているあかね。

4、花布の咲くころ
同じ二次元の彼を好きだった友達と、距離ができてしまった萌香。

5、煌めきのしずくをかぶせる
キラキラネームのせいで、人生をハードモードに感じる涙子(ティアラ)。

6、教室に並んだ背表紙
クラスに居場所が無く、「人生に詰んでしまった」と思い悩む三崎さん。


それぞれの悩みを持った少女たちを、しおり先生と物語は図書室で待っている。

どんなに辛くても、苦しくても未来はあなただけのもの。

優しさと温かさで少しずつ前向きになれる、ハートフルな青春小説。

「教室に並んだ背表紙」の引用と感想

ここからは実際に読んでみての引用と感想です。

6篇の三崎さんとしおり先生が、一緒に昼食をとりながら物語について話しているシーンを引用しました。


物語の中の主人公は、恋をして、夢をかなえて、やがて幸せになる。

けれど、今の三崎さんはクラスにすら居場所が無い、だからひたむきな主人公たちと未来のない自分を比べて絶望してしまう。

現実は、物語と違って救われる保証なんてない。

そんなことを思ってしまうので、物語は読みたくないと考える三崎さんに、しおり先生が質問します。

「未来が不安?」

それがまるで大事な質問であるかのように、しおり先生は首を傾げた。

食事の手を止めて、お箸がお弁当箱の縁に置かれている。

私は彼女から視線を落とし、その危うげなバランスで立てかけられている朱色の箸を見ながら、頷いた。

「そっかそっか」

少しして、先生は言った。

「それはひょっとしたら現代の物語の功罪かもしれないね。自分の人生を比べる先を、物語の中に見てしまうんだ。そういう明るくて眩しい物語ばかりに包まれると、それに比べて自分はって……、ちょっと落ち込んじゃう気持ちも、先生にはわかるな。」

「本当、ですか」

「そうだよ。たとえば先生もね、十代の子が主人公のお話を読んだりすると、わたしもこんなふうに青春を生きたかったなぁって、どうしてこうなれなかったんだろうって後悔して、つらくなっちゃうときもあるの」

 

りた
夢や目標に向かって一生懸命努力する青春小説を読むと、あまりの眩しさに、青春できなかった自分や熱中できない自分と比べて落ち込んでしまうこと、私もあります。

青春小説を読んだことのある方なら分かってもらえるのではないでしょうか。

でも、主人公たちと比べる必要なんてない、としおり先生は言います。

「でもね、それって普通のことなんだよ。物語はあくまでフィクションだもの。比べる必要なんてないの。明るく楽しい青春を過ごせないとだめ?きれいな青春を過ごさなくたって、私たちは生きていける。だって、明日にはどんな未来が待っているか、誰にもわからないじゃない?」

物語は、青春しろ、今を必死に生きろ、と読者に言っている訳ではない。

読んでくれた人が、明日に向かって生きていける「希望」や「勇気」をほんの少し分けてくれるものなんだ。

私はしおり先生の言葉を読んでいて、そう思うことができました。

物語に、自分を変えてくれる「何か」を求めるように、物語はあなたに「今より少しでも良い人生を送ってほしい」と寄り添ってくれているのではないでしょうか。

「教室に並んだ背表紙」のまとめ

今回は、「教室に並んだ背表紙」を書評しました。

私は「なんだか癒されそうな本だな~」と思い購入したわけですが、予想以上に癒されました。

私自身の学校生活の経験から共感できるものも多く、しおり先生の言葉が主人公たちだけではなく、私自身にも響きました。

あなたが学校生活で悩んでいること、辛い思いをしたことを、しおり先生が言葉となって癒してくれると思います。

この物語は、あなたが悩んだとき「少しでも明日に希望を持てるよう寄り添ってくれる」一冊です。


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